モジュール 004
エアロテスト:iPhoneでCdAを測定
ローラー台の正面にiPhoneを置き、自転車に乗ってペダルを回すだけ。カメラが前面投影面積を測定し、アプリがそこからCdAを算出します。ブラケット、下ハンドル、エアロバー(DHバー)で測定を繰り返せば、その差が速度(km/h)と、ライドで何分縮まるかでわかります。風洞もパワーメーターも必要ありません。
年間サブスクリプションに含まれています
テストの実際
エアロテストの進め方
-
自転車の正面にiPhoneを置く
ローラー台に自転車をセットし、iPhoneを約2.5 m離れた腰の高さに、自分のほうへ向けて置きます。頭から足先まで、全身が画面に収まるようにしてください。iPadでも測定できます。
-
ポジションを選び、乗ってペダルを回す
ペダルを回し始めると測定が自動で始まり、音声がガイドしてくれるので、画面に触れに戻る必要はありません。上半身と頭を動かさずに、そのポジションを30秒ほど保ちます。
-
カメラが前面投影面積を測定
アプリが映像の1コマごとにシルエットを切り出し、平方メートルに換算します。スケールは、iPhone ProシリーズではLiDARスキャナから、それ以外の機種では肩幅または身長から求めます。そこから、とっているポジションに応じてCdAが算出されます。計算はすべてiPhone上で行われ、画像が外部に送信されることはありません。
-
別のポジションを測って比較
ブラケット、下ハンドル、エアロバー。ポジションごとに個別に測定します。アプリが差をkm/hと分で示し、履歴を保存するので、測定を重ねるごとの変化を追うことができます。
CdAを速度に換算する際、アプリはMartin et al.(1998年)の数式を用いています。空気抵抗、転がり抵抗、勾配、風を考慮した、自転車のパワーモデルとして定評のあるものです。測定そのものにパワーメーターは不要で、入力したパワーはこの換算にだけ使われます。
測定方法
エアロをテストする4つの方法
CdAを知る方法は4つあります。測っているものも、必要な機材も、それぞれ異なります。
| 方法 | 測定するもの | 必要なもの |
|---|---|---|
| 風洞 | 風を制御した環境での、ライダーと自転車の実際の空気抵抗 | 風洞施設の予約(費用は高額) |
| 実走・トラックでのテスト | 何度も走行し、パワー、速度、減速から求めるCdA | パワーメーター、平坦なコース、弱い風、厳密な手順 |
| 数値シミュレーション(CFD) | 本人の3Dモデルをもとに計算した空気の流れ | 写真と身体寸法(走行は不要) |
| カメラによる測定 | ペダリング中の実際の前面投影面積(ここからCdAを算出) | iPhoneまたはWebカメラ、ローラー台 |
FramIQはカメラによる測定を採用しています。絶対値を求めるなら風洞の代わりにはなりませんが、自宅で好きなだけポジションを比べ、上半身を1 cm下げるごとにどれだけ違うかを確かめるには、最も手軽な方法です。
定義
CdAをわかりやすく
CdAは、抗力係数(Cd)と前面投影面積(A)を掛け合わせた値です。前者は空気が体と自転車の周りをどう流れるかを、後者は風を受ける面積を表します。ブレーキとして働くのはこの2つの積なので、切り離しては考えません。単位は平方メートルで、体を小さくまとめ、空気の流れを乱さない姿勢をとるほど小さくなります。
空気抵抗に打ち勝つのに必要なパワーは、速度の3乗に比例して増えます。20 km/hでは、空気抵抗がすでに消費パワーの半分以上を占め、残りは転がり抵抗や摩擦に使われます。35 km/hでは80%を超えます。だからこそ、エアロの重要度は速度によって変わります。低速では転がり抵抗もまだ大きな割合を占めますが、30 km/hを超えると空気抵抗が4分の3以上になります。
そしてここで、機材よりもポジションがものをいいます。ディープリムホイールに替えて縮まるCdAは0.01 m²程度。ブラケットから下ハンドルに持ち替えるだけで約0.10 m²、つまり10倍の効果が、費用ゼロで得られます。アマチュアサイクリストの予算で考えれば、お金をかけずにこれほど効くのはポジションだけです。
目安
4つのポジション、4つのCdA
この4つで、ロードバイク乗りが実際のライドでとるポジションのほとんどをカバーできます。最も高いポジションと最も低いポジションでは、CdAに約3倍の差があります。機材を検討するより前に、自転車で手にできる最大の改善ポイントです。
数値の見方について。これらはFramIQの計算エンジンが、身長1.75 m・体重75 kgの基準ライダーが標準的なロードバイクに乗った場合として算出した値です。自転車単体の分はどのポジションでも0.035 m²で、残りはライダー自身によるものです。背が高い人や肩幅の広い人ほど前面投影面積が大きく、どのポジションでもCdAは高めになります。変わらないのは、その順番です。
- 上ハンドル(ハンドル上部のフラット部):CdA 0.64 m²
- ブラケットポジション:CdA 0.40 m²
- 下ハンドル:CdA 0.30 m²
- エアロバー(トライアスロンポジション):CdA 0.21 m²
これらの値はどれも、あなた自身を測ったものではなく、あくまで目安です。アプリでは、カメラが各ポジションで実際の前面投影面積を測定します。またCdAはハンドル、ウェア、ヘルメットによっても変わるため、同じポジションでも2人のライダーが同じ数値になることはありません。
換算
速度にするとどれだけ違うか
平方メートル単位のCdAを見ても、ピンとくる人はいないでしょう。わかりやすいのは、同じパワーで出せる速度と、ライドのタイムです。同じ4つのポジションを、平坦路・200 Wで換算するとこうなります。
| ポジション | CdA | 200 W時の速度 | 40 km |
|---|---|---|---|
| 上ハンドル | 0.64 m² | 27.2 km/h | 1時間28分 |
| ブラケット | 0.40 m² | 31.5 km/h | 1時間16分 |
| 下ハンドル | 0.30 m² | 34.5 km/h | 1時間10分 |
| エアロバー | 0.21 m² | 38.5 km/h | 1時間2分 |
結果だけでなく、その理屈も
空気に対して使うパワーは、空気密度の2分の1 × CdA × 速度の3乗で表されます。そのため、パワーが一定なら、CdAを4分の1減らしても、速度が4分の1上がるわけではありません。速度の伸びは3乗根に従うので、CdAの差から想像するよりずっと控えめです。
ブラケットと下ハンドルの比較が、まさにその例です。計算上、CdAの差は25%。実際の路上では2.9 km/hの差で、40 kmなら6分あまりの短縮になります。1ワットも上乗せせずに得られる確かな改善ですが、パーセンテージから期待するほどの劇的な変化ではありません。
覚えておきたい目安は、平坦路・200 Wなら、ポジションを1段階変えるごとに3〜4.5 km/hということ。速く走るほど1段階の効果は大きく、ゆっくり走るほど小さくなります。
2つのポジションを比較
+2.9 km/h
平坦路・無風・200 W、ライダーと自転車の合計82 kg、良好な路面、海抜0 mでの推定値です。条件をひとつ変えるだけで、数値は変わります。
正直に
限界についても率直に
- 風洞ではありません。前面投影面積は実測しますが、各ポジションの抗力係数はモデルによるものなので、CdAはあくまで推定値です。特に信頼できるのは、同じ自転車・同じウェアでポジション同士を比べる場合です。
- アプリはパワーを測定しません。CdAの測定にパワーは不要ですが、表示される速度は入力したパワーに左右されます。パワーメーターがなければ、その値は仮定にすぎません。
- ほかの要素も影響します。ホイール、タイヤの空気圧、風、路面。測定はローラー台の上で行い、ポジションだけを切り出して評価します。一方、ヘルメットとウェアはシルエットの一部として測定に含まれます。
- 維持できないポジションには意味がありません。4つの限界のなかで、これが最も重要です。
覚えておきたい原則:最適なエアロポジションとは、パワーを落とさず、痛みもなく、ラインを乱さずに保てる、いちばん低いポジションです。
トレードオフ
エアロとポジション:体にかかる代償
エアロを追求するとは、具体的には上半身を下げ、股関節の角度を閉じることです。体はこの閉じた角度をどこかで受け止めますが、それが予想どおりの場所とは限りません。
股関節の角度が柔軟性の許す範囲を超えて閉じると、骨盤はそれ以上前に傾くことができず、後ろに倒れます。腰が丸まり、ペダルを踏むたびに、曲がった状態の腰椎に負担がかかります。ステムを下げすぎたあとの来院理由として、最も多いのがこれです。上半身では、肩と首にも負担がかかります。首は、頭を起こした姿勢をより長く支えなければならないからです。
膝も例外ではありません。低いポジションでは骨盤がサドルの前方へずれ、足はより閉じた角度で上死点を迎え、膝蓋骨(膝のお皿)への圧力が高まります。エアロポジションに変えたあとに膝の前側が痛み出した場合、膝そのものの問題であることはまずなく、原因はサドル後退量か高さにあります。
だからこそ、順番が大切です。まず体に無理のないポジションを整え、長く走っても維持できるかを確かめてから、はじめてCdAを0.01単位で削りにいきます。逆の順序で進めるのは、2 km/hと引き換えに腰痛を抱え込むようなものです。
-
サドル高さを調整する
すべてのポジションの土台です。上半身を下げる前にサドルの位置が正しくないと、股関節を閉じた代償を二重に払うことになります。
-
ロードバイクの膝の痛み
痛む場所、それがポジションについて示していること、そしてまず直すべき調整を解説します。
-
クリートの調整
力の伝わる連鎖すべての起点となる接点です。クリートの位置が合っていないと、よいポジションの効果も帳消しになります。
ポジションとエアロをまとめて見直す本格的な調整なら、それは院で受けるバイクフィッティングの領域です。
よくある質問
エアロテストについての質問
風洞を使わずにエアロテストはできますか?
できます。FramIQでは、ローラー台の上でiPhoneのカメラが前面投影面積を測定し、アプリがそこからCdAを算出します。風洞ほどの精度はありませんが、ポジション同士を比べて、どれがタイム短縮につながるかを見極めるには十分です。
CdAの測定にパワーメーターは必要ですか?
カメラによる測定なら必要ありません。測定のもとになるのはワット数ではなく、ライダーのシルエットです。パワーはCdAを速度に換算するためだけに使い、ご自身で入力できます。一方、実走でのテストにはパワーメーターが欠かせません。
テストにはどんな機材が必要ですか?
対応するiPhone(iOS 18.2以降)、ローラー台にセットした自転車、そして前方に約3 mのスペースです。iPhone Proシリーズでは、LiDARスキャナが距離を測り、スケールの精度を高めます。それ以外の機種では、肩幅または身長をもとにスケールを合わせます。
精度はどのくらいですか?
前面投影面積は実際にご本人を測定します。一方、そのポジションの抗力係数はモデルから求めるため、絶対値はあくまで推定値です。最も信頼できるのは、同じ条件で測った2つのポジションの差であり、注目すべきはこの差です。
エアロモジュールの料金はいくらですか?
年間サブスクリプション(13,000円/年)に含まれており、フレーム比較機能や動画解析もあわせてご利用いただけます。詳しくは料金ページをご覧ください。
実走でエアロをテストするには?
FramIQは、風の影響を受けないローラー台の上で測定します。実走では、パワーメーターを使ったフィールドテストを行います。風の穏やかな日に、平坦なコースを何度か走る方法です。両者は補い合う関係にあり、ローラー台でポジションを選び、実走でそれを確かめます。
次のライドの前に、ポジションをテストしましょう
CdAを推定し、2つのポジションを比べて、何km/h速くなり何分縮まるかを確かめられます。あとはトレーニングあるのみです。
エアロモジュールは年間サブスクリプションに含まれます · 13,000円/年