バイオメカニクス・ガイド
サドル高さの計算ツールと完全ガイド
サドル高さは、バイクフィッティングのなかで最も重要な調整です。まずはこの計算ツールでスタート値を出し、最終的な高さは関節角度の動画解析で確かめます。わずか数ミリのずれが、膝の慢性的な痛みの原因になるからです。
要点
サドル高さは、股下(cm)に0.883を掛けて求めます(グレッグ・レモンが広めたレモン法)。この値は、ボトムブラケット(BB)の軸の中心から、シートチューブに沿ってサドル上面まで測った長さです。あくまでスタート値なので、下死点での膝の角度で確かめます。目安は141〜152度です。
インタラクティブツール
サドル高さ計算ツール
股下とクランク長を入力してください。レモン法で計算したうえで、クランク長に応じて補正します。
裸足で、本を股にしっかり当てて測ります。測り方はすぐ下で説明しています。
計算式の基準は170mmです。クランクが長くなれば、その差の分だけサドルを下げます。
サドル高さ(BB軸の中心からサドル上面まで)
724 mm
シートチューブに沿って測ります。
測り方
股下の測り方
計算の精度は、股下をどれだけ正確に測れるかで決まります。股下が10mmずれると、サドル高さは約9mmずれます。
基本の姿勢
裸足になり、背中をまっすぐ壁につけて立ち、かかとも壁につけます。足は軽く開いて腰幅にします。
本を股に当てる
硬い本を脚のあいだに水平に差し込み、サドルに座ったときのように股(会陰部)にしっかり押し当てます。本は完全に水平に保ってください。
測って、もう一度
床から本の上端までを測ります。これを2回繰り返して平均を出します。この値を計算ツールに入力します。
臨床での確認
目標とする関節角度
レモン法の計算式は、あくまでスタート地点です。調整が正しいかどうかを決めるのは、ペダリング中に測った関節角度です。FramIQが動画でリアルタイムに測定するのは、まさにこの角度です。
膝(下死点)
141〜152°ペダルが一番下にあるときの伸展角度です。141°未満ならサドルが低すぎます。152°を超えると高すぎで、骨盤が左右に揺れるおそれがあります。
股関節(上死点)
50〜68°股関節が最も閉じる上死点での、股関節の開き角度です。この範囲はロードの目安で、トライアスロンではより閉じ、MTBではより開きます。リーチとサドル高さの両方が影響します。
体幹
30〜55°水平線に対する角度で、どの種目でも同じ範囲です。ロードでは多くのサイクリストが40〜50°に収まります。リーチとハンドルの高さで決まります。体幹が水平に近いうえにサドルが高いと、腰椎が圧迫されます。
肘
25〜40°軽く曲げた状態です。肘が伸びきっていると手首に負担がかかりすぎ、腕から肩まわりまで全体がこわばります。
早見表
股下とサドル高さの早見表
よくある股下の値にレモン法(股下×0.883)を当てはめた表です(クランク長170mm)。あくまでスタート値なので、膝の角度(141〜152°)で確かめてください。
| 股下(cm) | サドル高さ(cm) | 股下(cm) | サドル高さ(cm) |
|---|---|---|---|
| 70 | 61.8 | 84 | 74.2 |
| 72 | 63.6 | 86 | 75.9 |
| 74 | 65.3 | 88 | 77.7 |
| 76 | 67.1 | 90 | 79.5 |
| 78 | 68.9 | 92 | 81.2 |
| 80 | 70.6 | 94 | 83.0 |
| 82 | 72.4 | 96 | 84.8 |
高さは、BB軸の中心からシートチューブに沿ってサドル上面まで測った値です。クランク長が170mm以外の場合は、上の計算ツールを使ってください。補正を自動で行います。
原因の見分け方
サドル高さのずれと、それによる痛み
サイクリストの痛みの多くは、サドル高さに直接関係するバイオメカニクス上の原因から生じます。痛む場所がわかれば、どの調整が間違っているのかをたどれることがよくあります。
腸脛靭帯炎(腸脛靭帯症候群)
膝の外側の痛みで、走っているうちに少しずつ強くなります。脚を伸ばすたびに、腸脛靭帯が大腿骨の外側上顆とこすれて起こります。サドルを3〜5mm下げるだけで消えることがよくあります。
骨盤の揺れと腰痛
ペダルが下に来るたびに、足でペダルを追いかける状態になります。ペダルを踏むたびに骨盤が左右に傾き、腰で代償する動きや仙腸関節の痛みが生じます。
膝蓋大腿疼痛症候群
膝の前側、膝のお皿(膝蓋骨)の下の痛みで、下り坂や走ったあとに強くなります。膝が曲がりすぎることで、膝蓋骨の軟骨にかかる圧迫が増えます。
パワーの低下と、脚が詰まった感覚
大腿四頭筋が、本来の可動域いっぱいに働かなくなります。数値に表れるほどのパワー低下、脚の重さ、そしてロングライドで早めに出る脚のつりにつながります。
ここに挙げた原因の見立ては、あくまで目安です。サドル高さが主な原因であることは多いものの、ほかの要素も関わっています。サドル後退量、クリート(Qファクター、回転)、クランク長、そして体の特徴(大腿骨の長さ、股関節の柔軟性)です。確かな判断ができるのは、動画解析を含めた総合的な評価だけです。
手順
サドルを実際に調整する手順
1. 計算式から始める
上の計算ツールで理論上の高さを出し、サドルをその値に合わせます。BB軸の中心からサドル上面まで、シートチューブに沿って正確に測ってください。
2. ローラー台で試す
最初の調整は、条件をそろえられるローラー台で行います。10〜15分ペダルを回して体を慣らしたら、真横から自分を撮影します。骨盤を見てください。左右に揺れていればサドルが高すぎます。脚が窮屈そうなら低すぎます。
3. 3mmずつ動かす
一度に3mmを超えて高さを変えないでください。体が慣れるには時間が必要です。変更と変更のあいだには、少なくとも1〜2回は走りましょう。いきなり10mmも変えれば、ケガのもとです。
4. 膝の角度で確かめる
最終確認は、下死点で膝が伸びたときの角度です。目安は141〜152°。FramIQは、プロ用の機材なしに、iPhoneの動画解析でこの角度をリアルタイムに測定します。それを担うのが動画解析によるポジション調整モジュールです。
調整をやり直すタイミング
- 脚のケガや手術のあと
- 5kg前後の大きな体重の変化があったとき
- ロードからトライアスロン、MTBからグラベルなど、種目を変えるとき
- 自転車、サドル、ペダルを替えるたび
- 高さが正しいのに痛みが続くとき
動画解析で調整を確かめましょう
レモン法で出せるのはスタート値です。FramIQはペダリング中の膝、股関節、体幹の実際の角度を測り、1度単位の精密な調整につなげます。
クリートモジュールは無料 · 動画解析は4,000円から
評価:5点満点中5点
「サドルとクリートを正確に調整でき、走りに確かな違いが出ました。ポジションがずっと快適になりました!」